第19 回 内視鏡下静脈疾患治療研究会
The 19th annual meeting of the JSEPS
ご案内・プログラム・抄録
会期:2020年9月18日(金)14:00~17:20
web形式での開催(第40回日本静脈学会総会に併催)
一般演題は、発表7分+討論3分で御願いします。
総合討論は、発表15分+質疑/討論10分程度で御願いします。

当番世話人: NTT東日本札幌病院心臓血管外科 松崎賢司
お問い合わせ: NTT東日本札幌病院心臓血管外科 松崎賢司
〒060-0061 北海道札幌市中央区南1条西15丁目
E-mail: kmatsuzaki@east.ntt.co.jp
TEL:011-623-7000 FAX:011-623-7527
主催:内視鏡下静脈疾患治療研究会(Japanese SEPS study group)
http://jseps.sakura.ne.jp/db

第19回内視鏡下静脈疾患治療研究会(JSEPS)プログラム
14:00-14:05 開会あいさつ
国立病院機構 東京医療センター名誉院長 松本純夫
一般演題:
14:05-14:25
座長 :岐阜ハートセンター 形成外科 菰田 拓之
1 動脈血流障害による難治性下腿潰瘍の1例
NTT東日本札幌病院心臓血管外科 松崎 賢司
2  SEPSで加療した難治性下腿潰瘍の1例
NTT東日本札幌病院心臓血管外科 松崎 賢司
休憩15分
総合討論1:PAPsの現状と今後の方向性
14:40-15:55
座長:福岡山王病院血管外科 星野 祐二
3  Stage4肺癌を合併した下肢静脈瘤性潰瘍に対してPAPSを行った1例
西宮渡辺心臓脳・血管センター 心臓血管外科 畑田 充俊、吉田 和則、林史子、田渕 正樹、中尾 佳永
4  PAPsの歴史と私のPAPsの経験
松阪おおたクリニック    草川 均
5 PAPsを用いた静脈うっ滞性潰瘍治療の現状と今後の課題
1)たかの橋中央病院血管外科2)三菱三原病院外科
春田 直樹1) 、新原 亮2) 、赤羽 慎太郎1) 、築家 恵美1)
休憩5分
総合討論2:Harley Street Vein Symposium with the College of Phlebology Londonにむけて
16:00-16:50
座長:たかの橋中央病院血管外科 春田 直樹
6 シンガポールでのHarley Street Vein SymposiumにむけたJSEPSとしての取り組みについて
たかの橋中央病院血管外科 春田 直樹
7 シンガポールでのシンポジウムで使用するSEPSモデル作成の途中経過
松阪おおたクリニック   草川 均
休憩5分
総合討論3: IPV単独治療レジストリーの構想と現状
16:55-17:20
座長:松阪おおたクリニック    草川 均
8  IPV単独治療の評価の研究の構想と現況
川崎医科大学 心臓血管外科 田淵 篤

抄録集
演題1
動脈血流障害による難治性下腿潰瘍の1例
NTT東日本札幌病院心臓血管外科 松崎 賢司
症例:83歳、女性。既往歴:関節リウマチでリウマチ科follow中、生物製剤使用中。現病歴:2018/3、リウマチ科での下肢エコーで右膝窩動脈閉塞を指摘され当科紹介。ABI0.84、右下腿血圧90㎜Hgで症状ないので抗血小板薬のみ服用とした。2019/3に右下腿浮腫と創傷出現。静脈は穿通枝も含め弁不全無し。ただし皮膚生検ではうっ滞性皮膚炎の診断。下腿の疼痛でABIは測定できなかったが足趾の冷感はなく、足関節以下も問題なかったため廃用性浮腫による潰瘍と診断。圧迫を指導した。皮膚科で植皮を施行したがその後、急速に潰瘍は悪化。2019/5当科再診となる。足関節以下は潰瘍ないものの動脈障害で圧迫が十分にできないことも悪化の原因と考え入院、下肢血行再建の方針となる。
入院時現症:潰瘍は右下腿前脛骨部から外側にかけて広範囲にわたり、前方は足関節に達していたが足趾は問題なし。
動脈造影で膝窩動脈までは血流は保たれており膝窩以下の慢性閉塞があり側副血流で後脛骨動脈が描出された。CTで動脈石灰化高度で血管炎ではなく閉塞性動脈硬化症と思われた。手術は右膝窩-後脛骨動脈バイパスを自家静脈で施行。潰瘍部のデブリののち2週間は潰瘍部洗浄とした。その後NPWT2週間ののち再度植皮施行し生着した。
結語:治療前の病理でうっ滞性皮膚炎とされた難治性下腿潰瘍に対し動脈血行再建を中心とする加療を行い改善がえられた。下腿潰瘍であっても動脈障害を合併する場合は血行再建も念頭に置くべきである

演題2
SEPSで加療した難治性下腿潰瘍の1例
NTT東日本札幌病院心臓血管外科 松崎 賢司
症例:64歳、女性。既往歴:シェーグレン症候群、限局型皮膚型全身性強皮症でリウマチ科follow中、免疫抑制剤使用無し。原発性胆汁性肝硬変で消化器科follow中、ウルソ内服で安定。現病歴:2019年春から下腿浮腫自覚。ストッキングでの経過観察も脱着時に左下腿に創傷形成、2019/7から皮膚科での加療も改善なく潰瘍拡大。疼痛も強く、下肢エコーでIPVをみとめ2019/10当科紹介。蜂窩織炎合併しており入院。現症:左下腿に計15㎝大の潰瘍あり。感染を伴い(緑膿菌、セラチア検出)白苔をみとめた。周辺の発赤も著明。動脈拍動触知良好。静脈瘤はない。
下肢超音波検査: cockett3相当のIPVをみとめた。伏在静脈弁不全やDVTは認めないが下腿大伏在静脈はpulsatileであった。
治療経過:蜂窩織炎加療の為、抗生剤投与と下肢拳上、冷却、安静を9日間施行し炎症の改善ののちSEPSを施行した。エコーでのIPVは潰瘍頭側縁に近い部位1か所であったが、潰瘍下の筋膜もすべて剥離した。SEPSののちSEPS創から大伏在静脈を確保し末梢に向けてfoam硬化療法施行。その後潰瘍部をデブリした。一部皮下組織を病理に提出したが壊死組織のみで病的意義は不明とされた。その後NPWTを3週間施行したのち皮膚科で植皮を行った。植皮の生着は良好で潰瘍は根治した状態が現在まで維持されている
結語:単独IPVのみでの潰瘍としては大きすぎる印象であったがSEPS他で改善した。潰瘍下の筋膜剥離は潰瘍部の炎症改善に寄与する可能性がある。

演題3
Stage4肺癌を合併した下肢静脈瘤性潰瘍に対してPAPSを行った1例
西宮渡辺心臓脳・血管センター 心臓血管外科
畑田 充俊、吉田 和則、林 史子、田渕 正樹、中尾 佳永
【はじめに】高齢化社会の進行により坦癌患者が多くなり、坦癌患者に下肢静脈瘤が合併すること経験します。その際には、静脈血栓症などの合併症に危惧することがあります。
今回、Stage4肺癌を合併した下肢静脈瘤性潰瘍に対してPAPSを施行し、下肢潰瘍治癒を経験したので、これを報告する。
【症例】 症例は79歳男性。既往歴に高血圧、肺炎があった。喫煙歴30本/日×58年。36ヵ月前より左下腿潰瘍、右下腿色素沈着を認めて当科紹介となった。エコーで両側大伏在静脈-大腿静脈合流部に逆流と左下腿部に不全交通枝を認めた。
術前検査の胸部レントゲンで右肺腫瘤指摘。CTで右肺腫瘍と縦隔リンパ節腫大を認めた。近医で肺腺癌Stage4と診断し、抗癌剤投与予定となった。左下肢静脈瘤性潰瘍に対して、ELVeSレーザーでの下肢静脈瘤血管内焼灼術、PAPSを施行した。術後1ヵ月で難治性潰瘍は治癒した。
【まとめ】Stage4肺癌を合併した下肢静脈瘤性潰瘍に対してPAPSを施行し、難治性下肢潰瘍を治癒することに成功した。

演題4
PAPsの歴史と私のPAPsの経験
松阪おおたクリニック 草川 均
【はじめに】PAPsという概念は、約15年前にアメリカのSteve Eliasらによって提唱されたもので、Percutaneous ablation of perforatorsの略であるが、それに先立つ約20年近く前に、イギリスのWhiteleyらによって、TRLOP(TRansLuminal Occlusion Perforators)という言葉で提唱されていた。しかしその割に、その具体的な方法や結果についてまとめられた論文が非常に少ない上に、最近日本で試されている1-1.2mmのレーザースリムファイバーで行われているPAPsとは使用機具や方法などが全く違っている。欧米の論文を提示して説明の上、自分自身でのつたない経験について述べる。
【自験例】PAPs導入前後での私のIPVに対する治療方針を提示し、2018年3月から2020年6月(9/18までにもう少し増えるかもしれません)までに施行した124本のPAPsについて、その方法と結果を述べるとともに、PAPs成功(IPV閉塞)の評価についての自分なりの基準について示す。またPAPsを行ったIPVの位置分布図についても示したい。
【さいごに】まだPreliminaryな状況でのまとまりのない内容の薄い発表になりますが、実際の症例に遭遇した時の皆さんのご参考にでもなれば幸いです。PAPsはまだ公には認められていない治療ですが、現時点でも、PTSや表在静脈治療後などに伴った難治性下腿潰瘍の近くにあるIPVを持つ方で、SEPSで筋膜下の癒着で切れなかった方、SEPSが麻酔のリスクでできない方、SEPS後の再発IPV、種々の理由で入院治療を拒否される方には、堂々と適応としてよいものと考えています。

演題5
PAPsを用いた静脈うっ滞性潰瘍治療の現状と今後の課題
1)たかの橋中央病院血管外科2)三菱三原病院外科
春田 直樹1) 、新原 亮2) 、赤羽 慎太郎1) 、築家 恵美1)
はじめに:下腿うっ滞性皮膚病変部に存在する不全穿通枝(IPV)を遮 断する術式として考案されたのがSEPS(Subfascial Endoscopic Perforator Surgery)であるが、SEPSで処置困難なIPVsがあり、その解決策の一つがPAPs(percutaneous ablation of perforators)である。
対象:2012年以降2020年4月までに63症例65肢にPAPsを行った。
方法と結果:使用機器は980/1470nm半導体レーザーで、原則transluminal ablationを選択したが、手技的に困難な症例ではtransfixingとした。全例PAPs施行直後に超音波検査でIPVの筋膜通過部の血流途絶を確認し、予定したIPVの術中閉塞が得られた。
考察と結語:SEPSでは内果より末梢側や、脛骨前面や脛骨外側に存在するIPVの処理は困難であるが、PAPsではこれらの部位にも特に制限なく処理可能であった。最近の術式変更点としては、細径レーザーファイバーの登場により、より細い穿刺針でのファイバー挿入が可能となった。また従来レーザー出力を6.5~10ワットで行っていたのを4ワットに減少し、かつ周囲への熱伝導を抑える目的で短時間照射を繰り返しで行うようにした。

演題6
シンガポールでのHarley Street Vein SymposiumにむけたJSEPSとしての取り組みについて
たかの橋中央病院血管外科 春田 直樹
          
演題7
シンガポールでのシンポジウムで使用するSEPSモデル作成の途中経過
松阪おおたクリニック   草川 均
本年7月に予定され、Covid19の影響で1年延期された、”the Harley Street Vein Symposium with the College of Phlebology London”で使用を目指す、SEPSモデルの作成の途中経過について、ご報告させていただきます。
このシンポジウムは、シンガポールのDr. Sriram Narayananによって種々の静脈疾患の治療のエクスパートを世界各国から呼んで学ぶ目的に主催され、その企画の中に日本のSEPSも入れたいという意向が春田先生に伝えられました。
具体的な企画としては、講義と質疑応答を行う”Masterclasses”と、実技を教える”Workshops”に参加してほしいというものでした。医療費の問題でPAPsを行いにくいアジアの先生方に、日本のSEPSを広める大変良い機会になるものと思われます。前者は星野祐二先生、後者は春田先生と有志で、という形になりそうですが、実技指導のためのSEPSモデルがないということで、モデル作成を試みました。
 最終的に業者にお願いするにしても、だいたいどんなものでそれらしいものができるのか、まず自分でホームセンターや100円ショップを回って購入したもので小学生レベルの工作を行い、Covidまん延前の1月初めに、永田先生、武田先生のご協力を得て、手術室での内視鏡セットを用いた実験を行い、まずまずの感触を得ました。その時の写真、動画を供覧いたします。
 武田先生のご意見で、2月に”京都科学”さんに連絡し、実際のSEPSのビデオ、モデルの実物、モデルを使った手術ビデオを見ていただき、打ち合わせに入ったところで今回のCovidになってしまい、その後進展なく、試作品ができたという連絡は6月の時点ではまだもらっていません。9月にできていれば、提示します。
 経費見積もりでは、2台の基盤モデルで消費税込み275000円、あとはディスポ部分で、研究会経費から捻出することは可能とのことです。
 今後の本番までの行程としては、試作品ができあがったら、春田先生を中心に実際使用して改善点のチェックを行い、本番に間に合うようにしようと思っています。

演題8  
IPV単独治療の評価の研究の構想と現況
川崎医科大学 心臓血管外科 田淵 篤