第18 回 内視鏡下静脈疾患治療研究会
The 18th annual meeting of the JSEPS
ご案内・プログラム・抄録

会期:2019 年 7 月 5 日(金)、13 時 30 分〜17 時 30 分
会場:ウインクあいち(日本静脈学会会場) 9F小会議室908
         JR名古屋駅桜通り口から徒歩5分
〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4-38

当番世話人: 松阪おおたクリニック   草川 均
お問い合わせ: 松阪おおたクリニック 草川 均
〒515-0043 三重県松阪市下村町993
E-mail: kusagawa@oota-cli.jp
TEL:0598-29-1213 FAX:0598-29-1262
主催:内視鏡下静脈疾患治療研究会(Japanese SEPS study group)
http://jseps.sakura.ne.jp/db

第18回 内視鏡下静脈疾患治療研究会ご案内

・ 会の名称:第 18回内視鏡下静脈疾患治療研究会
・ 会期:2019 年 7 月 5 日(金)、13時30 分〜16時30 分
会場:ウインクあいち(日本静脈学会会場) 9F小会議室908
〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4-38
・ 参加費: 3,000 円

      演者へのご案内
一般演題は、発表 10分+討論3分で御願いします。
総合討論は、発表 15-20分程度で御願いします。
パソコン(PC)OS は Windows 10, Power Point 2016 を準備します。PowerPoint 2007, 2013 でも使用可能ですが、誤作動の少ない 2016 で御願いします。
データは、USB メモリーにてお持ち下さい。
ご自身の PC を使用する際の接続は、HDMI typeAまたは mini D-sub 15pin 端子を準備します。
MACの方は出来るだけ PC をご持参下さい。
 第18回 内視鏡下静脈疾患治療研究会プログラム
開会の挨拶 13 時 30 分〜13時 35 分
国立病院機構 東京医療センター名誉院長 松本純夫

【一般演題1】13 時 35分〜14 時 05分
座長: 三菱三原病院 外科 新原 亮
        JR仙台病院       菅原 弘光
1.下腿難治性潰瘍に対してPAPsを施行した1例
NTT東日本札幌病院 心臓血管外科  松崎賢司
2.現在取り組んでいるPAPsの実際
たかの橋中央病院 血管外科   春田直樹

【参加者全員による写真撮影】14時 05 分〜14 時 20 分

【一般演題2】14 時 20 分〜14 時50 分
座長:藤田医科大学ばんたね病院 消化器外科  永田英俊
   岐阜ハートセンター 形成外科      菰田拓之
1.静脈うっ滞性潰瘍に対する外科治療の治療成績
川崎医科大学 心臓血管外科   田淵 篤
2.下肢静脈瘤を合併したリベド血管炎による難治性下腿潰瘍の1例
島根大学 皮膚科      伊藤礼司

【一般演題3】14時 50 分〜15 時 20 分
座長: 山梨厚生病院 血管外科   伊従敬二
愛媛大学 心臓血管外科 八杉 巧
1.間歇焼灼法はPAPsの適応を拡大するか?
福岡和白病院 心臓血管外科        手島英一
2.脛骨神経ブロック下SEPSは可能か?
藤田医科大学ばんたね病院 消化器外科 永田英俊

【休憩】15 時 20 分〜15 時 40 分

【総合討論:IPV単独治療の評価に関するレジストリー研究の計画】
15 時 40 分〜17 時 00 分
司会:たかの橋中央病院 血管外科  春田直樹
   松阪おおたクリニック      草川 均
1. JSEPSデータのretrospective cohort studyで言えたことと今後に残された課題        
   松阪おおたクリニック      草川 均
2. レジストリー研究の実際とIPV治療研究への導入
    洛和会音羽病院 脈管外科   武田 亮二
3. IPV単独治療の評価の研究の具体的構想
    川崎医科大学 心臓血管外科  田淵 篤
  この後、忌憚ないご意見をいただき、新構想へ向けて、十分時間をかけて総合討論

【会務総会】17時 00 分〜17 時 15 分
司会:内視鏡下静脈疾患治療研究会事務局 春田 直樹

内視鏡下静脈疾患治療研究会会務総会 2019年7月5日(金曜日)

司会 春田直樹先生

議案

1. 次回、開催日 2020年6月19日(金曜日)? (第40回日本静脈学会総会、2020年6月18日〜19日)

2. 次回、当番世話人

3. 会計報告 (八杉 巧先生)

4. 世話人への推薦承認  手島英一先生 福岡和白病院

5. その他

【閉会の挨拶】
第 18 回内視鏡下静脈疾患治療研究会 当番世話人 草川 均     

Memo

抄録
【一般演題1−1】
下腿難治性潰瘍に対してPAPsを施行した1例
NTT東日本札幌病院 心臓血管外科 松崎 賢司

【症例】60歳代の男性。2年前に両下肢静脈瘤c2に対して他院で両側小伏在静脈のEVLAを受けている。2017/11より右下腿潰瘍が下腿外側から後面に出現し、拡大傾向となり当院皮膚科へ。採血でANCA陽性で膠原病疑いでリウマチ内科紹介も血管炎は否定的とされ、当科コンサルトあり。小伏在静脈末梢の弁不全と、潰瘍直下のIPVが認められた。2018/4に残存小伏在のEVLAとPAPsをtryした。全麻、腹臥位で手術。PAPは潰瘍が大きく潰瘍部位穿刺で施行した。Transfixation法で2箇所のPAPを施行した。次に小伏在末梢のEVLAを施行しようとしたがPAP時のTLAで小伏在がspasticになり穿刺不能。Stabで確保しても挿入できず、結局焼灼末梢をligationして終了した。術後はNPWTを施行し、最終的に植皮して潰瘍根治を得た。治癒後のエコーおよびCTでIPVの閉塞が確認された。【考察・結語】:難治性の下腿潰瘍に対しPAPsを施行し治癒が得られた1例を経験した。潰瘍を穿刺点としても潰瘍悪化はきたさなかった。同時に伏在静脈を焼灼する場合、位置関係によってはPAPsのTLAによりspasmきたし穿刺困難となることがあるのであらかじめwireを入れておくべきである。

【一般演題1−2】
演題:現在取り組んでいるPAPsの実際
施設:たかの橋中央病院血管外科
演者:春田 直樹 

抄録:2012年11月より2019年5月までに男性17例女性20例の39肢でPAPsを試みた。使用機器はELVeS1470,EndothermeLaser1470で、2018年以降は細径ファイバーを用い、出力:6.5~10Watt、焼灼長:1~8cm,平均2.1±1.cmであった。最近の症例ではPAPs時にTLA麻酔は行わず、IPV閉塞をモニターしながら焼灼を行っている。基本的にTransluminal な焼灼術を選択し、IPV一カ所当たりのLEEDは45.0~147.9J/cm,平均68.7±18.2J/cmで。全例でIPVの術中閉塞を確認した。また、フォローアップの検査で伴走動脈の閉塞は経験しなかった。現在当科で行っているPAPs術式の紹介をさせて頂きます。

【一般演題2−1】
静脈鬱滞性潰瘍に対する外科治療の治療成績-20th EVF Annual Meeting参加報告記-
川崎医科大学 心臓血管外科
田淵 篤、柚木靖弘、渡部芳子、桒田憲明、田村太志、山澤隆彦、古川博史、金岡祐司、種本和雄

【はじめに】6月27日から29日にスイス、チューリッヒで開催された20th EVF Annual Meetingに参加、発表したので、発表内容の要約と反応、EVFの概要および得られた知見について報告する。
【目的】CEAP臨床分類C6症例の術式別の治療成績、術後の自他覚症状、静脈機能の改善を検討する。
【対象、方法】2011年10月から2017年5月に当科で手術したC6症例65肢を対象とした。手術は伏在静脈ストリッピングあるいは血管内レーザー治療(EVLA)と内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術(SEPS)併用44肢、SEPS単独12肢、EVLA単独9肢であった。SEPSはone port systemで、EVLAは980nmダイオードレーザーを用いた。術後1,2,6,12ヵ月で外来経過観察を行い、潰瘍治癒率を求めた。術後自他覚症状の改善はVenous clinical severity score (VCSS)を検討し、静脈機能は空気容積脈波法でVenous Filling Index (VFI)、Venous Volume (VV)を測定した。
【結果】術式別の潰瘍治癒率(1ヵ月、12ヵ月)は、SEPS併用群:63.6%、88.6%、SEPS単独群:66.7%、91.6%、EVLA単独群:66.7%、77.8%であり、術式別に有意差はなかった。経過察期間中に潰瘍治癒後再発例はなかった。VCSSは各手術群とも術後有意に改善し、術式別に有意差はなかった。VFI値はSEPS併用群、EVLA単独群では術後有意に改善し、SEPS単独群では有意差はなかった。VV値はSEPS併用群で術後有意に改善し、EVLA単独群、SEPS単独群では有意差はなかった。
【結語】EVLA単独群の短期の治療成績、自他覚症状および静脈機能の改善はSEPS併用群と遜色なく、潰瘍非治癒あるいは再発症例に対して二期的にSEPSでもよいと考えられた。
【一般演題2−2】
下肢静脈瘤を合併したリベド血管炎による難治性下腿潰瘍の1例
伊藤礼司、新原寛之、中川優生、森田栄伸
島根大学皮膚科 

59歳女性、初診1年前より右踵周囲に疼痛、紅斑があり、大豆大程度の大きさの潰瘍形成した。近医を受診し、外用薬等で治療されたが難治で潰瘍数も増加してきた。下肢静脈瘤も指摘されたため当科を紹介受診した。初診時精査にて、大腿部不全穿通枝からの逆流による右大伏在静脈瘤、右小伏在静脈瘤が確認され、血管内レーザー焼灼術を施行した。
術後は外来にてしばらくステロイド外用と弾性ストッキング圧迫にて経過フォローするも疼痛、潰瘍は継続したため、診断確定のため複数回皮膚生検施行した。3回目の生検病理所見では陳旧化した白血球破砕性血管炎所見があり、特徴的な網状皮斑からリベド血管炎と考えられた。他、原因精査では基礎疾患に糖尿病なく、膠原病、血管炎等は血液検査から否定され、全身性血管炎は否定的で皮膚に限局した病態と考えた。治療として、血管拡張剤と抗凝固剤で治療を開始したが改善乏しく、さらにステロイドミニパルス療法を施行し、植皮術を追加した。パルス後は疼痛の速やかな改善を認め、抗凝固剤でINR:2.0~2.5でコントロールし、0.5㎎/㎏/日からプドニゾロンを開始、漸減し残存潰瘍も徐々に肉芽形成し、潰瘍面積が縮小傾向となった。潰瘍はすべて上皮化するも、血管炎に伴った末梢神経障害にて皮膚のしびれ感が潰瘍のあった部位周辺に残存しているが、日常生活で特に支障は感じていない。
下肢静脈瘤うっ滞性難治性下腿潰瘍を疑ったが、皮膚潰瘍の精査にて血管炎が指摘され、抗炎症、抗凝固治療にて潰瘍が改善した症例を経験したので報告する。

【一般演題3−1】
間歇焼灼法はPAPsの適応を拡大するか?

福岡和白病院 心臓血管外科
手島英一 中島淳博 富永隆治 伊藤翼

1470nmラディアルファイバーの出現はカテーテルの側方焼灼を可能としたことによるPAPsの安心感を高めることが可能であった。しかし、カテーテル径が1.8mmと太くなったことにより14Gによる穿刺が必要となり難易度が高いこと、通常使用する6Frシース以外の物品を使用しなければいけないなど様々な理由で普及の妨げになる要素があった。しかし、スリムファイバーの出現により穿刺は16G針を使用することができ技術的にも経営的にも負担が減り普及する可能性が高まった。
当院でのPAPsの適応血管は1、逆流を伴う交通枝、2、血管径が3mm以上、3、筋膜から深部静脈の距離が1.5cm以上離れている、4、周囲に動脈を認めないことを条件としていたが条件4を満たさないためにPAPsを施行しなかった症例がある。
PAPsでの焼灼方法は規定ジュールに達成するまでペダルを踏み続ける定点での連続焼灼が主流であったが周囲組織まで損傷するリスクが高かった。しかし、動脈と並走するIPVを間歇的に焼灼する方法が春田により報告されている。
 1470、1470スリムファイバーを用いて連続焼灼と間歇焼灼法(春田式)を比較した。
手術使用後のファイバーで1470は10W 7sec 70Jの定点焼灼、1470スリムでは6.5W 10sec 65Jを目標に焼灼、間歇法は1秒焼灼し1秒休憩の繰り返しを行い規定秒数まで焼灼した。
 焼灼対象は寒天、白こんにゃく、はんぺん、杏仁豆腐、豆腐(木綿)、豆腐(絹ごし)を使用。全素材に対し連続法と間歇法を試みて結果判定した。すべての素材においてポップコーン音の確認は可能であったがより肉眼的な判断が可能であった2素材が最適であると判断。マイクロバブルが観察できる寒天と焦げの確認できるはんぺんの画像を提示し間歇法での最適焼灼法を検討したい。

【一般演題3−2】
脛骨神経ブロック下SEPSは可能か 
藤田医科大学 ばんたね病院 (消化器)外科 
永田英俊、神尾健士郎、近藤ゆか、東口貴彦、河合永季、安岡宏展、越智隆之、林千紘、
志村正博、古田晋平 荒川 敏 浅野之夫 川辺則彦 石原 慎 伊東昌広 堀口明彦  

【緒言】以前から田淵(川崎医科大学)は神経ブロック下SEPSを、畑田(済生会和歌山病院)は局所麻酔下でのSEPSを発表し麻酔法によるSEPS手術の低侵襲化への工夫を報告している。当科でも2018年7月から脛骨神経ブロック下SEPSを開始したのでその初期成績について報告する。【期間および対象】2018年7月~2019年6月までに施行したSEPS症例連続6例7肢の治療成績を報告する。【麻酔方法】伏臥位にて膝屈曲部頭側9cmの大腿部で、USガイド下に大腿外側から神経ブロック針で脛骨神経周囲に局所麻酔薬を注入した。ブロックは外科医が行った。畑田の報告に準じて全例プロポフォールによる沈静を行った。【結果】症例1;81歳、女性。C4。脛骨神経ブロック(以下ブロック)1%キシロカイン9ml。TPS-SEPS+GSV-RFA;内視鏡時間38分、切離IPV1本 症例2;79歳、女性、C4。ブロック1%キシロカイン5.9ml+マーカイン1.2ml。TPS-SEPS;内視鏡時間49分、切離IPV1本。症例3;81歳、女性、C4。ブロック1%キシロカイン10ml+0.75%アナペイン10ml。OPS-SEPS+GSV-RFA;内視鏡時間27分、切離IPV2本。症例4;73歳、女性、C4。ブロック0.5%キシロカイン12ml:OPS-SEPS+GSV-RFA 内視鏡時間35分、切離IPV2本。症例5;78歳、女性、両下肢C2。ブロック0.75%アナペイン5m+生食5ml×2。両側TPS-SEPS、右内視鏡時間35分、切離IPV2本、左内視鏡時間30分、切離IPV2本。症例6;59歳、男性、C4。ブロック0.75%アナペイン5ml。TPS-SEPS+GSV-RFA;内視鏡時間36分、切離IPV1本。6例7肢全例でSEPS(OPS2肢、TPS5肢)は完遂した。麻酔深度;症例3と5で筋弛緩の遷延から翌日までベッド上となった。【まとめ】1.脛骨神経ブロック手技の習得は比較的容易で脛骨神経ブロック下SEPSは、OPS、TPSともに可能であった。また4/6例で術後早期から歩行可能であった。2.今後は、最長2時間程度で麻酔効果が消失するような麻酔薬液の量、組成の検討を計画中である。

【総合討論―1】
   JSEPSデータのretrospective studyで言えたことと今後に残された課題

          松阪おおたクリニック   草川 均

 IPV治療のレジストリー研究について話し合っていただく前に、2018年にPhlebologyに掲載されたJSEPSデータのretrospective cohort studyや、他の参考になるような過去の研究で言えたこと、足りないことを整理し、必要となることを考察した。
 JSEPSの報告では、1287肢の中長期多施設臨床データで、ネジ式ポートを使った独自のSEPS術式を提示し、VCSSは同時表在治療ありでもなしでも有意に改善したこと、潰瘍一時治癒率が96.2%、また潰瘍再発率が潰瘍治癒後平均46.0か月で12.0%と良好な成績であることを示した。しかし、後ろ向き研究であること、表在治療合併が83.8%と高いこと、QOLスコアの分析がないことが欠点であり、さらに、SEPSの不成功例については、上記症例数に対して12肢の報告しかなかったが、厳密なエコーフォローアップをすれば、目的のIPVを切れていなかった症例がもっとあった可能性を否定できず、圧迫療法も一定の方法ではなく、結果が必ずしもIPV治療によるものを反映していない可能性がある。
 NASEPSのレジストリー研究でも手技成功率の記載はなく、3件ある前向きランダム化研究では数が少なく経過観察期間が短かったり、ちゃんとIPVが切れていないものが混ざってしまい、IPV治療の有意性を示すことができる結果を得ていない。
 PAPsやIPV-UGFSの研究でも同様に、その手技の不成功例の予後は悪いという逃げの結論が多く、IPV治療の有意性を示すに至っていない。
 したがって、IPV治療の有意性を示すためには、今回のような前向きのレジストリー研究で、前回の評価法に加え、各IPV単独治療の成功の定義、成功率をはっきりと示し、成功した症例でのみ評価を行うこと、圧迫療法や深部静脈病変の位置づけをしっかりすること、QOL評価を行うこと、長期にわたる経過観察を行うことが重要になると考える。

【総合討論―2】
抄録
洛和会音羽病院 脈管外科 武田亮二

『はじめに』昨年PhlebologyにJSEPSの成果となる論文が掲載され、 SEPSの良好な治療成績が明らかになった。一方、血管内焼灼術の進歩により、PAPs(TRLOP; TRansLuminal Occlusion of Perforators)が先進的な施設で行われている。今回、不全穿通枝治療の多施設前向きレジストリー研究を提案したい。JSEPSのデータは、症例数は多いが、後ろ向き研究、ケースコントロールスタディで現在の論文の潮流であるQOLスコアを評価していないなどやや弱い点もあった。Evidence LevelはRCTが一番であるが、本邦の静脈疾患分野において、医療機器や薬事審査以外でRCTは見当たらず、現実的には実施困難と考える。レジストリー研究は、患者登録を行う、前向き研究で、近年多くの研究が本邦でも行われておりReal World Dataを反映するものとして評価されている。この研究でSEPSとそれ以外のIPV治療と圧迫療法単独を比較することが IPV治療の妥当性を証明することになるのではと考えている。レジストリー研究の実際について具体的に発表する。

【総合討論−3】
IPV単独治療の評価に関する研究の具体的構想

川崎医科大学 心臓血管外科
田淵 篤

 SEPS症例の多くは、伏在静脈不全に対する手術も同時に施行しており、SEPS単体の有用性を明確に示すことができなかった。IPV治療の有意性を示すためには、IPV単独治療についての前向きレジストリー研究が重要な意味を持つと思われる。
エントリー症例はCEAP臨床分類C4b以上(評価のしやすさから考えるとC6)で、以前に表在静脈不全に対する手術既往を有する症例、不全穿通枝単独病変(血栓後症候群も含む)である。エントリー前に最低1ヵ月間圧迫療法を行い、病状の改善が得られない症例をエントリーする。術前の患者年齢、性別、身長、体重、既往歴、静脈瘤治療歴、CEAP分類、自他覚症状(VCSS)、病悩期間を記録する。超音波検査所見としてIPV本数(IPVの定義として、径3.0mm以上、逆流時間500ms以上)、深部静脈の開存、逆流(逆流時間1s以上)の有無を記録する。手術所見として麻酔法、手術時間、切離したIPV数、術中合併症を記録し、初期治療成功率(術前指摘したIPVをすべて切離できたと定義)を求める。術後は弾性ストッキング(ハイソックス型、中圧)着用を継続し、術後経過観察は1,2,3,6,12,24,36ヵ月で行い、術後合併症、VCSS、QOLスコア(SF-36など)を記録する。超音波検査でIPV本数(切離不成功あるいは新規)を検討し、術前に指摘したIPVが消失した症例を治療成功例と定義し、治療成功率を求める。C6症例では潰瘍治癒、縮小の有無、潰瘍治癒期間、潰瘍治癒後再発の有無、再発までの期間を記録し、潰瘍治癒率、潰瘍治癒後再発率を求める。
 多施設共同前向き観察研究であり、プロトコールの詳細が確定した段階で川崎医科大学倫理委員会の審査を受け、承認された時点で各エントリー施設の倫理委員会に申請、承認をいただく。承認を得た時点からエントリーを開始し、2年間で100症例を目標とする。
 今回は研究の具体的構想について提示するが、あくまで試(私)案であり、会員および研究会参加の皆様のご意見を賜り、より実効性のある、有用なものに高めたいと考える。